家やマンションを売る時の税金や確定申告の流れを大解説

そもそも確定申告とは何か?

確定申告とは、所得にかかる税金の額を計算し、税金を納税するための手続きのことです。不動産を売却した際に、利益が発生すればその分に所得税が発生します。それらは確定申告を行う必要があり、場合によっては税金を支払う必要があるのです。

不動産を売却したら確定申告が必要?しないとどうなる?

不動産を売却した場合、①確定申告が必要な人、②確定申告が不要な人、③確定申告をするべき人に分かれます。どのような基準で確定申告の必要・不要が判断されるのでしょうか。

①確定申告が必要な人
不動産売却において、以下の計算式で算出した「課税譲渡所得」がある場合は税金がかかるため確定申告が必要です。

「課税譲渡所得」=譲渡価格(売却額) ― (取得費用+諸経費)

ポイントは売れた金額が利益としてそのまま課税されるのではなく、取得にかかった費用と諸経費が差し引かれます。例えば物件が2500万円で売れたとしても、2500万円が利益として課税されるわけではないということです。

▼不動産を売却したら確定申告が必要?しないとどうなる?

  1. 課税譲渡所得
  2. 譲渡価格
  3. 取得費用

取得費って何?

取得費とは不動産を入手したときの価格を指します。例えば4000万円で購入した不動産であれば、購入代金の4000万円、購入時の租税公課、測量費、設備費、改良費などが該当します。

また、土地と建物は分けて考える必要があり、土地であれば購入代金に上記のような諸経費を加えたものが取得費となりますが、建物の場合は、居住して使用して、月日が経過することで建物としての価値が減少していくため、建物の取得費は購入代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引いたもので算出します。

減価償却の詳細は建物の用途・構造で償却率が異なるため詳細は割愛します。
このような計算式で計算して、「課税譲渡所得」がある人は確定申告を行う必要があります。

具体例

5000万円で不動産を購入。売却した際には5500万円で売ることができました。減価償却費が400万円の場合、取得費が4600万円となります。また、諸経費で登記費用や仲介手数料、その他で300万円でかかったと仮定した場合、以下の計算となります。

5500万円 ― (4700万円+300万円)=500万円

よってこのケースでは所得が発生したことになり、所得税が発生します。税率は5年以下の所有期間であれば30%、5年超の所有期間であれば15%となります。

それぞれで計算すると所得税は以下の通りです。

5年以下→500万円×30%=1,500,000円
5年超 →500万円×15%=750,000円

このように所得税は所有期間によっても大きく異なるため、可能であれば5年以上所有して物件を売却した方が、税金は安く済みそうです。

②確定申告が不要な人

確定申告を行う必要がない人は課税譲渡所得がマイナスの人です。

具体例

5000万円で不動産を購入。売却した際には3000万円で売ることができました。減価償却費が400万円の場合、取得費が4600万円となります。また、諸経費で登記費用や仲介手数料、その他で300万円でかかったと仮定した場合、以下の計算となります。

3000万円 ― (5000万円+300万円)=▲2300万円

よってこのケースでは所得が発生したことになり、所得税が発生しません。確かに売却代金は入ってくるのですが、税金も発生せず確定申告も不要です。

ただし、注意点としては確定申告不要でも、税務署から問い合わせが来ることはしばしばあります。そして、なぜ所得を申告しなかったかと確認を取られるため、譲渡時の売買契約書や、購入時の売買契約書等を準備して対応を行う必要があります。

③確定申告をするべき人

最後に注意しておくべき点についてですが、利益の有無に関わらず確定申告をしたほうが得な人がいます。一つは3000万円の特別控除でマイナスとなる人、特別控除を行わなくてもマイナスとなる人です。

1) 3,000万円の特別控除でマイナスになる人

3000万円の特別控除とは、居住用の不動産を売却した際に適用される控除となっています。
居住用不動産の要件は次の通りです。

(1)現に居住している家屋やその家屋と共に譲渡する敷地の譲渡の場合

(2)転居してから3年後の12月31日までに、居住していた家屋やその家屋と共に譲渡するする敷地の譲渡の場合(この間に貸付や事業用に供していても適用となる)

(3)災害などにより居住していた家屋が滅失した時は、災害のあった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その敷地だけ譲渡する場合

(4)転居後に家屋を取り壊した場合には、転居してから3年後の12月31日までか、取壊し後1年以内か、いずれか早い日までに譲渡する場合(取壊し後にその敷地を貸し付けたり、事業の用に供したりすると適用外となる)

これらに該当する場合、仮に「譲渡価額-取得費-譲渡費用」がプラスであっても、そこから3,000万円を引くと課税譲渡所得がマイナスとなる場合があります。

具体例

5000万円で不動産を購入。売却した際には5500万円で売ることができました。減価償却費が400万円の場合、取得費が4600万円となります。また、諸経費で登記費用や仲介手数料、その他で300万円でかかったと仮定した場合、更に3000万円の特別控除を加えると以下の計算となります。

5500万円 ― (4700万円+300万円+3000万円)=▲2500万円

注意すべきは、この制度を利用するためには確定申告が必要となるということです。

2) 特別控除を行わなくてもマイナスとなる人

居住用財産を売却して譲渡損失が発生した場合は、①買換えと②売却のみで以下の特例が使えます。この場合、確定申告を行うことで源泉徴収税額の還付を受けることができます。
これについても確定申告を行う必要があるため、その点は注意が必要です。

不動産の確定申告は誰に相談すればいい?

確定申告について相談するには、誰に相談をすればいいのでしょうか。

①会計事務所(税理士など)

もし、知り合いや仕事で繋がりのある税理士がいれば、そこに相談するのもおすすめです。ただし、税理士などに相談する場合は、相手側も業務として対応してくるため、「敷居」が高く感じられるかもしれません。

②無料税務相談所

確定申告の時期に各地区で開催されます。担当の税理士が対応してくれるほか、とても親切に対応してくれます。

③税務署

税務署に問い合わせて確定申告の相談を行うことも可能です。まずは電話で最寄りの税務署に連絡を取って、概要を伝えて日取りを決めてから伺うようにしましょう。

▼不動産の確定申告は誰に相談すればいい?

  1. 会計事務所
  2. 税理士
  3. 確定申告
  4. 税務署

不動産の確定申告はいつまでにしなければいけない?

売却した翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告を行います。提出期限が土・日・祝日のときはその翌日が期限です。

不動産の確定申告は自分でできる?

確定申告は自分で行うことで、税理士等に報酬を支払わず安く済ませることができます。この費用が安く済むというのが、自分で確定申告を行う最大のメリットです。

しかし、自分で確定申告を行う場合、手間と時間がかかるということ、間違いがあれば修正申告が必要となります。これらデメリットがあることを理解して、確定申告を行う必要があるでしょう。

また、確定申告を行うことでそれがスキルとして身につくと考えることもできますが、やはり素人である以上、修正申告のリスクがつきまといますからプロに任せるのが英断と言えるでしょう。

譲渡所得が出ると翌年の住民税や健康保険に影響する?

譲渡所得が発生した場合、住民税や国民健康保険には影響があります。翌年の支払い分のみ不動産売却の影響を受けた価格で、支払いを行っていく必要があります。

国民健康保険

国民健康保険は自営業者や事業者が加入します。給与所得者であれば特に影響はありませんからこちらの記事は読まなくても大丈夫でしょう。

注意点は特別控除で税金を支払う必要がなくても、国民健康保険料はアップするということです。例えば3000万円の特別控除で譲渡所得が0になったとしても、国民健康保険料については、特別控除額を差し引く前の譲渡所得で算出されます。

税金と国民健康保険の制度はそれぞれ独立した制度ですから不動産売却金額の手取りは、翌年の国民健康保険料の増加分を差し引いた金額となります。

▼譲渡所得が出ると翌年の住民税や健康保険に影響する?

  1. 国民健康保険
  2. 住民税

不動産の確定申告で必要な書類は?

 

 

必要書類 入手先
確定申告書の用紙(申告書B・申告書第三表(分離課税用)) 国税庁HPにてダウンロード
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】 国税庁HPにてダウンロード
「売買契約書及び領収証」の写し 自分で保管しているか、不動産会社に問い合わせ
「不動産仲介手数料の領収証」の写し 自分で保管しているか、不動産会社に問い合わせ
「測量費・登記費用その他売却の時の費用の領収証」の写し 自分で保管しているか、不動産会社に問い合わせ
土地・建物の全部事項証明書 法務局にて取得

▼不動産の確定申告で必要な書類は?

  1. 申告書B
  2. 確定申告書付表兼計算明細書
  3. 売買契約書及び領収証
  4. 不動産仲介手数料の領収証
  5. 全部事項証明書
  6. 法務局

取得費がわからない場合はどうする?

例えば親から相続や贈与によって不動産を取得した場合は、不動産の価格がわからないというケースも想定されます。このような場合は譲渡価格の5%を取得費として算出します。

確定申告をしないことに関するリスクとは?

自分の判断だけで確定申告をしないというのは危険と言えます。確定申告をしないということについては、①儲けがあった場合「脱税」となってしまう、②自主的に納税手続きを行わない場合支払いしていない期間分の追徴課税がされてしまいます、③申告をしないままでいると最悪の場合「財産差し押さえ」の可能性もある、これらのリスクについて把握しておく必要があると言えるでしょう。

①儲けがあった場合「脱税」となってしまう

「脱税」と聞くとテレビやドラマの世界のように感じる人もいるかもしれません。しかし、申告の必要があるのに、あえて申告しなかったとなればそれは脱税となってしまいます。

確定申告は年間の所得を翌年の2月1日~3月15日の期間の間に、申告及び納税をする必要があります。この期間内に申告及び納税を怠ったケースになると「無申告加算税」が要求されることとなります。

このような余分な税金を払うくらいであれば、最初から税金を納めていたほうが、労力もお金も安く済むことがほとんどです。この点には十分注意するべきでしょう。

②自主的に納税手続きを行わない場合支払いしていない期間分の延長税

税金を定められた期限内に納付しない場合、納付期限の翌日より納付日までの日数に応じた延滞税が自動的に発生します。

例えば次のような場合には延滞税が課されます。
(1) 申告などで確定した税額を法定納期限までに完納しないとき。
(2) 期限後申告書又は修正申告書を提出した場合で、納付しなければならない税額があるとき。
(3) 更正又は決定の処分を受けた場合で、納付しなければならない税額があるとき。

いずれの場合も、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じた延滞税を納付しなければなりません。

なお、延滞税は本税だけを対象として課されるものであり、加算税などに対しては課されません。

参照:国税庁HPより

③申告をしないままでいると最悪の場合「財産差し押さえ」の可能性もある

申告を怠って放置していると、最悪のケースでは財産の差し押さえということも想定されます。このようなことが勤務先や親族にわかられてしまっては、信用問題にも繋がってしまいます。

▼確定申告をしないことに関するリスクとは?

  1. 脱税
  2. 延長税

まとめ

不動産を売却した場合、まずは課税譲渡所得が発生するのか、しないのかについて確認を行いましょう。もし、譲渡所得が発生するのであれば、利用できる控除がないか確認を行います。これらは税務署の税務相談窓口を利用すると良いでしょう。

不動産を売却して発生するのは、所得税、住民税、国民健康保険の増額です。これらは可能であれば不動産売却検討段階で算定して、これらを差し引いた金額を不動産売却の手取り金額として考えておきましょう。

確定申告をする場合は、自分で行うことも可能ですが可能であれば税理士を利用することでより、正確な申告手続きを行うことができるでしょう。自分で行う場合も税務署にて確認を取りながら進めることで、申告のミスを減らすことができるでしょう。

確定申告をしないことによるリスクは、脱税、遅延税や財産の差し押さえなどのリスクを内在しています。これらを理解したうえで、確実に慎重に申告の手続きを行うようにしましょう。

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